遺伝子染色体検査室

遺伝子染色体検査室では,白血病や悪性リンパ腫などの造血器疾患に関連する染色体検査や遺伝子検査を中心に行っています。

また,血液中のウイルス(肝炎ウイルス(HBV・HCV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV))の核酸定量検査や新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR検査も行っています。

遺伝子や染色体ってなんだろう?

生物の身体は,アデニン(A),チミン(T),シトシン(C),グアニン(G)という4種類の「塩基」が連なった鎖(塩基鎖)から成る「DNA」を基に作られています。DNAは,2本の塩基鎖がらせん状に結合しており,塩基の並び方(塩基配列)により身体を構成する様々なたんぱく質が作られます。この特定の配列のことを「遺伝子」といいます。つまり,DNAは身体の設計図なのです。

DNAは,非常に細い糸のような状態で主に細胞内の核と呼ばれる袋に入っていますが,細胞が増える過程で特定の蛋白質にぐるぐる巻き付き凝縮します。この状態を「染色体」といいます。

染色体の本数は,生物の種類により異なります。ヒトの場合は,常染色体と呼ばれる22対の染色体と,性別を決める性染色体2本(女性はX染色体2本,男性はX染色体1本とY染色体1本)の合計46本の染色体を持っています。

染色体検査ってどんな検査?

遺伝子染色体検査室で行っている染色体検査には,G分染法(G-band)とFISH法(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法)があります。

G分染法(G-band)】

G分染法は,染色体を染める方法の一種です。トリプシンやギムザ液という試薬により,染色体に濃淡のしましま(バンド)が現れます。バンドの位置は染色体ごとに決まっており,「ISCN」という国際規格に基づいて異常があるかどうかを判定します。染色体の異常には,本数の過不足(異数性),染色体の一部が他の染色体と入れ代わる(転座),染色体の一部が無くなる(欠失)などがあります。

造血器疾患では染色体異常を伴うことが多く,また疾患の種類によっては決まった形式の染色体異常を生じます。慢性骨髄性白血病(CML)や急性骨髄性白血病(AML),悪性リンパ腫(ML)といった疾患の種類の特定や予後の推定にあたって,G分染法の結果が大きく意味を持つことも多いのです。

G分染法の検査は下の図に示す工程で行います。検査の工程の大半を手作業で行うため,検体(主に骨髄液)の培養から標本スライドを作成し,染色体画像を解析して結果を報告するまでに概ね1週間かかります。近年,標本スライド作成や染色の工程を自動で行う機器が開発されており,当検査室でも2020年より自動機器を導入しました。検査工程の一部を自動化することで,G分染法の結果をより早く臨床科に報告できるよう努めています。

FISH法】

FISH法は,特定の塩基配列と結合するように合成した短いDNA(蛍光標識DNAプローブ)を使います。プローブを細胞の核に取り込ませると,DNA上の特定の位置を光らせることができます。写真のように,細胞核全体を紫の蛍光色素で染めることで,核とDNA上の蛍光シグナルを同時に観察することができます。プローブには,造血器疾患に特異的または関連の大きい染色体異常を検出するものや,性染色体(X,Y染色体)を識別するものなど,いろいろな種類があります。また,下の図のように蛍光シグナルの見え方にもいくつかのパターンがあります。

FISH法は必ずしも培養操作を必要としないため,G分染法よりも迅速に結果を報告することができます。また,染色体の状態にない時期の細胞(間期核)を多数(500~1000細胞)カウントすることから,染色体異常を有する細胞や,XX細胞とXY細胞の比率を,数値(%)として表すことできます。FISH法は,疾患の種類の特定や治療効果の判定,また異性間(男性から女性,女性から男性)の骨髄移植後の経過観察にとても有用な検査です。

■ 遺伝子検査ってどんな検査?

ヒトのDNAは約30億個の塩基が連なっていますが(ヒト細胞1個あたりのDNAをつなげると全長2メートル!),その中で遺伝子の数は約2万個といわれています。細胞が分裂する時には,この塩基配列も正確にコピー(複製)されるのですが,コピーに失敗すると,本来働くべき物質が働かなくなったり,異常に働き過ぎた結果細胞ががん化したりします。白血病をはじめとした造血器疾患に関しては,原因となるいろいろな遺伝子異常が発見されています。遺伝子検査によって,染色体検査では検出困難なレベルの微細・微量の遺伝子異常を検出できることがあります。

遺伝子検査室

微小残存病変MRDMinimal Residual Disease)の検出

白血病の治療が始まると,体内の白血病細胞の数が減っていきます。白血病細胞の数が非常に少なくなり,G分染法やFISH法では検出できないレベルに達しても,体内には微小の白血病細胞(MRD)が残っている場合があります。そこで威力を発揮するのがPCR法(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)という高感度な検査です。

PCR法は特定の塩基配列を連続的に倍々に増やす(増幅)方法です。目的の遺伝子を含む領域だけを増やすように設計した短い塩基鎖と増幅に必要な試薬を混ぜ,サーマルサイクラという機器で温度を1回上げ下げすると,遺伝子領域は2倍に増えます。この温度の上げ下げを30回程度繰り返すことで約10万倍まで増幅すると,電気泳動という手法により目で見て増幅を確認することができます(定性検査)。また,この原理を応用して,白血病細胞中の目的遺伝子の量を数値で表わすこともできます(定量検査)。この結果から治療効果を判定したり,再発を早期に発見することが可能です。

【ウイルス核酸定量検査】

血液中のB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV),後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の遺伝子を,リアルタイムPCR法で定量します。血しょう中のウイルス核酸の抽出からPCRまでを自動で行う全自動定量PCR装置により,多数の検体を迅速に測定することができます。検査結果はウイルスの感染を証明するためだけでなく,治療薬の発達にともなう治療効果の判定にも重要な情報となります。

全自動定量PCR装置

【新型コロナウイルス(SARS-CoV-2PCR検査】

2020年初頭から世界的なパンデミックを起こしている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症への対応として,本検査室では細菌検査室と協力し2020年4月よりPCR検査を開始しております。また,唾液を使用したウイルス核酸検出および関連の研究を,関係各所と連携して行っています。唾液を使ったPCR検査の詳細については,下記URLよりご参照ください。

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